映画とインテリアブログ 「第18作目」
2014年、最後のコラムです。
このコラムも今回で18回目。
皆さんの目に触れるコラムという発信を始めて1年半が経ったと思うと
中々、感慨深いものがありますね。
インテリアという枠内で大好きな映画を書く時、あるインテリアアイテムを念頭に映画を
紐付けて書く事もあれば、タイムリーに観た映画からインスパイアされた衝動で書く事もあります。
2014年を締め括るコラムのテーマを迷っていた師走。
グッドタイミングでインテリア的、
映画的にオススメしたいと思える映画に出会えたので皆さんにご紹介したいと思います。
「her 世界でひとつの彼女」 監督・脚本 スパイク ジョーンズ
舞台は近未来のLA。コンピューターのOS(オペレーティング システム、iPhoneのSiriのようなもの)に恋をした男のお話です。
まず、映画的な魅力から。
監督のスパイク ジョーンズはミュージックビデオ畑出身の監督です。独創的な発想と
既存の映画セオリーに囚われない映像感覚で幅広い層に支持を得ている45歳の奇才です。
ミュージックビデオやCMというフォーマットは数分の時間枠の中で如何に人々の注意を惹き、心を掴むかということに苦心しているので、低予算というハンデを逆手に取ったアイデアやテーマの本質を効果的に伝える手腕が冴えている人が多く、
昨今の気鋭の監督に洋邦問わず、この領域出身の監督が多いのも必然と言えるでしょう。
近未来という設定ではありますが、あまりCGなどの技術に頼った箇所はなく、撮影もおそらくオーソドックスなロケ撮影で正攻法ですが、その近未来のLAを表現するのに現在の上海で撮影したり(PM2.5のスモッグが絶妙に効いています・・・)、登場人物の服装や窓の色を工夫することで(服装については後で詳しく述べます)今の延長上にある「近未来感」を演出しており、今までにない地に足のついたSF感が経験出来ます。
この映画のヒロインというのが先に述べたコンピューターの「OS」なので、
姿形はなくヒロインの「声」だけの演技で成り立っています。
その声が今をときめくスカーレット ヨハンソン!!
飛び抜けた容姿を封印し、声だけの出演を決めた彼女の志も素晴らしいですが、
そのハスキーで肉感的な声が作品に寄与する効果とそのパブリックイメージを込みで
観客に訴求すると目論んだオファー側のクレバーさに拍手です!
このような変わった設定や独自の方法論の映画はそれらのテクニックやアイデアに自己陶酔しがちですが、この映画の特筆すべき点は、あくまでもそれらは時に「恋の痛み、喜び」であったり「繋がり」という極めて「人間的な感情」について語るためのツールだと割り切るスマートさと人間臭い共感を訴えるアツさの共存にあると思います。
自分の身に置き換えて身悶えするような恋愛あるあるをこのような映画で味わえると思っていなかったので、不意打ち的にヤラレてしまいました(笑)
そしてインテリア的な魅力を語るには先に述べた服装の工夫について詳しく話す必要があります。
この映画の衣装は近未来感を出すために、「足し算でなく、引き算のスタイリング」という
方針を掲げ、Gパンやネクタイを着用している人を(エキストラでも)出さない、ヴィンテージファッション(例えばハイウエストような)を絶妙なスタイリングでスタイリッシュ感を演出→近未来感がさりげなく醸し出されるという非常に目からウロコの演出の工夫を採用しています。
この方法論は劇中のインテリアにも適用されており、今までありがちなスペーシーなデザイン家具を配置する安易な未来演出ではなく、極めてベーシックでシンプルなヴィンテージライクな家具をミニマムに配置することで衣装同様、現在延長上の近未来の生活感を表現することに成功しています。
この演出方法にはインテリアスタイリングの極意のようなものが隠されているように思いました。
つまり、流行に左右されず、飽きのこない部屋作りの鍵はシンプルなデザインと
最大公約数的な家具の選び方だと云うこと!!
・・・とは言っても物を増やさない日々の生活の送り、装飾過多の誘惑に打ち克ち続けるのはとても難しいですよね(苦笑)
しかし、その一貫性の無さや統一性のほころびに住む人の個性が出てくるのも事実。
そのようなインテリアの間口の広さと深さに堪らなく惹き込まれて、この仕事を続けていますw
2014年も色々な映画を観てきましたが、この作品のようなスタイリッシュ且つ、ロマンティックなこのコラム向けの映画に出会えた事に感謝です(笑)
是非、ご覧頂けたらと思います!!
来年、2015年も映画とインテリアの見聞を広める出逢いが多く、その魅力を少しでも多く皆さんと分かち合える一年であるよう願っています。
2015年もお付き合いのほど、宜しくお願いします!!
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